“English is another language of ours.”
ビジネスパーソンに贈る国際共通語としての英語

松岡 昇氏プロフィール
青山学院大学大学院国際政治経済研究科修了。専門は、国際コミュニケーション、社会言語学。現在、獨協大学、立教大学及び大手企業を中心に講義やセミナーを務める超人気講師。 NPOグローバルヒューマンイノベーション協会理事。著書に『英語の「壁」はディクテーションで乗り越える!』(アルク)、『日本人は英語のここが聞き取れない』(アルク)、『企業・大学はグローバル人材をどう育てるか』(共著、アスク出版)、Presentations to Go(共著、センゲージラーニング)、Kick Off for the TOEIC Test(金星堂) など。勝てないテニス、話せない落語、スウィングできないジャズが趣味だとか。
大学講師として、またあらゆる大手企業にて白熱した英語研修とグローバル人材育成に取り組む松岡先生。TOEIC教材製作、アルクの通信講座「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ、評判の高い講義、プレゼンテーション研修・・・これまでの経験、知見からたくさんのアドバイスをいただきました。

関口:日本人の目指すべき英語とはどんな英語でしょうか?

松岡氏:テストに例えるなら60~70点程度の英語力があれば良いと思います。ビジネスで一定以上の精度が求められる人でも70〜80点の英語でいい。マックスで 80点もあれば十分ではないか。ちなみに楽天の三木谷さんは75点くらいだと思います。素晴らしく通じる英語です。我々日本人のできる範囲で英語を使えばいいと思います。

ビジネスマンは英語のコンテストをやっているのではありません。英語で仕事のコンテストをやっているのです。ですから、目標とすべき英語は、「学校英語」のような厳密に正確な英語でもなければ、ネイティブスピーカーのようなノンネイティブに分かりにくい英語でもありません。グローバル環境で、人や仕事を動かすのに機能する英語です。

例えば、「私は昨日友人と映画に行った」だったら
I went to movie with friend yesterday.という英語で十分通じますよね。正しくは、I went to the movies with a friend yesterday.でしょうが、冠詞(a/the)や名詞の単数・複数などは、さほど意味を持っていません。このくらいのマイナーな間違いは気にしなくていいということ。発音もネイティブのようでなくていいんです。
三木谷さんのような“十分なレベル”の事例が増えていくといいですね。日本のビジネスマンが目指すべき英語が明確になりますから。苦手意識のある人も肩の力がスッと抜けて、6、70点目指してはじめの一歩を踏み出せます。

関口:学習を継続するヒントを教えていただけますか

松岡氏:ふたつあります。ひとつは短期決戦で計画すること。つまり、長期継続学習をしないことです(笑)。もうひとつはテクニック的な話しになりますが、学習記録ノートを作ること。これは道具として有効です。
英語学習は短期決戦が効果的です。1年間で目標1000時間が理想です。1ヶ月にすると約83時間。1週間約20時間、1日3時間の学習です。厳しいなら2年間で目標1000時間(1日1.5時間)でも良し、最長で3年間までは許容範囲です。しかし3年を超えると累積1000時間勉強してもだめ、使える英語にはなりません。これは今まで私が見てきた膨大なデータから肌で感じていることです。一気に1000時間くらい練習をやって、話したり聞いたり、英語を使うことが習慣になれば、あとは楽です。

関口:社会人が1日に3時間学習するのは難しいのでは?

松岡氏:活用されていない隙間時間(家から駅まで、電車の中、駅から会社まで、昼休み、会社から駅まで、帰りの電車の中、駅から家まで)は意外とあるものです。計算してみてください。働く人にとっては、この隙間時間が学習時間です。ですから、教材は常に持ち歩きます。MP3プレーヤやスマホに音声は入れ、歩きながら聞きます。勉強ではなく「練習」ですから、机はあまり要りません。

関口:学習記録ノートとは …?

松岡氏:学習記録ノートは、1000時間の練習をやり切るための道具です。隙間時間で細切れに学習したことと時間を記録して、1日の合計を出すものです。内容は細かく書かなくてもいい。これで1日、1週間、1ヶ月、と積み重ねていくと楽しくなっていくんです。週20時間のペースが続けば、「1年で行けるぞ!」と思えるし、週10時間が続けば、「2年で何とかなりそうだ」と思える。逆に7時間に満たない週が続けば「このままではだめ」ということなります。数字でデイリーにウィークリーに管理できます。
お勧めするのは、私も学生の有志とやっていますが、週に1回集まり、みんなでノートを回す。「おお、18時間!けっこうやるね」とか「マンガばっかりだな(笑)」とか、勉強時間と内容を共有します。特に指導や指摘をしなくても、やれなかったら本人が一番やれなかったことを感じてるのでいいんです。これは可能であれば社会人の方にも職場の仲間とやってほしいですね。楽しいですし、仲間がいることは継続の励みにもなります。

関口:松岡先生は、よく、英語の“勉強”ではなく“練習”といわれますが、その点を詳しくお話いただけませんか?

松岡氏:今まで学校ではリーディングやライティング、グラマーが多かった。どれも文字として扱いますよね。いわゆる勉強です。しかし、必要とされるのは、スピーキングやリスニングのコミュニケーション力。高めるには、“音”と“練習”がキーワードとなります。リーディングが音になればリスニングになるし、ライティングを音にすればスピーキングになる。この「音に出す」練習を増やす必要があるんです。
したがって、教材には必ず音声が必要です。音声と、英文スクリプトと、その対訳(日本語)の3つがあれば、いろいろな効果的な練習が可能です。
学習は、受け身的なものに終らず、シャドーイングしたり、想像上の相手に意見を言ったり、能動的な“練習”を増やすべきです。

関口:週刊東洋経済誌の記事ではTOEIC600点までTOEICの勉強を頑張り、それからスピーキング力を高める学習を薦めています。先生はどうお考えですか?

松岡氏:英語の基本的な構造やルール(文法)、語彙をまずはしっかり学ぶ、という意味では賛成です。私は「中学英語+α」で十分だと思ってます。逆に、この範囲の文法をしっかり理解し、練習すればTOEIC600はパスするはずです。単語も基本2000語+ESP(English for Specific Purpose:自分の分野の専門用語)で十分です。

関口:TOEICについてはどうですか?

松岡氏:TOEICで基礎力をつけて、準備をしていく、そうすればいざ、必要なときに現場に出てもすぐにスピーキングできる。逆にそういう基礎がないと頭打ちになりますね。基礎がしっかりしていれば、現場に行き、実践を通じて伸びが速いですよ。600-700くらいまでは地道に問題集をやって基盤をしっかりさせ、備えておく。正統な英語を自分の中に蓄積させておくのはいいと思います。 
TOEIC一辺倒は問題ですが、ひとつの指標として使えます。目標を定めれば、そこにむかって高めていけるので、そういう使い方は良いでしょう。

関口:英語のプレゼンテーションについて考えをお聞かせください

松岡氏:日本企業は「一流の技術に三流の営業」とからかわれます。日本人特有の謙虚さが邪魔をしているのか非常にもったいない。そんな日本人らしさが信頼を得ることもありますが、グローバル環境では、言うべきところは言うべきでしょう。日本では人を説得するのは下品だという価値観がありますが、それは日本の価値観であって、海外でのプレゼンでは言葉にしてはじめて伝わります。
キーワードはModest, still assertive(謙虚ではあるが、毅然してとモノを言う)です。訓練すれば必ずできるようになりますし、逆に外国人も賞賛するような素晴らしい関係を築くことができます。

世界は以心伝心じゃない、意見伝心です。
1言って10察してもらうのではなく、10を言って1伝わるんです。

関口:貴重なお話をありがとうございました。ビジネスのグローバル化に対応するため日本企業も変わろうとしています。英語をはじめとするグローバル人材育成において非常に参考になりました。